あり得る未来

35年前に公開された映画の続編『ブレードランナー2049』を観た。最近、SF映画のシーンが「あり得る未来」と思えるようになってきている。
前作の設定は2019年のロサンゼルスだった。今回、2049年のロサンゼルスの上空は一面に広がるソーラーパネルに覆われて街は暗かった。35年前に描かれた2019年は、今になって見ると景色が大分違うけれど、2049年を描いた未来は、ところどころ「あり得る」と思えた。

車は、間違いなく自動運転になっている。これまで自動車産業は100年以上にわたって続いてきた。その主役はガソリンエンジン車。20年前に、地球の温暖化問題を始めとする環境問題への意識の高まりを背景に、トヨタ自動車がハイブリッド車の『プリウス』を発売した。ガソリンを使う量が少ないエコカーと言われるハイブリッド車もエンジンはある。そして今、世界のメーカーが”次世代エコカーの本命”として開発を進めているのが「EV」、Electric Vehicleの略で電気自動車だ。電気自動車にはエンジンがない、エンジンの代わりはモーターである。

EV車のモーターは、ガソリン車のエンジンに比べて構造がシンプルで部品の数が少ない。具体的には、ガソリン車のエンジンを構成する部品は1万~3万点、それに対しEV車に搭載するモーターの部品点数は30~40点ほどという。

EV車は、見方を変えると電気製品といってもいい。毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される「CES(国際家電見本市)」では、2011年から車が展示されるようになった。今のCESはモーターショー化している。老舗の自動車メーカーの他にも、シリコンバレーのベンチャー企業がEV車を出展している。テスラ社がそうだ。今後も自動車メーカーでない企業の参入が予想される。

EV車、自動運転化で全ての車はインターネットにつながるようになる。車も「物」だから、EV車は物がインターネットにつながる「IoT」(Internet of Things)になる。車がインターネットにつながるとどうなるのか。今まで考えつかないような事、こんなことも出来そうだ、などといろんな事が実現可能になりそうだ。そうなると、自動車業界もこれからは、IoTで物から「事」をサービスする時代になってくる。

IoTのキーワードは、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータである。

物がインターネットにつながると、物に付いているセンサーからいろいろな情報がリアルタイムでクラウドに保存されビックデータになる。保存されたビックデータをAIが分析して新しい情報をロボットに伝える。そして、ロボットが人間にアドバイスするという流れがある。このロボットは、今はスマートフォンや卓上のスピーカーの形にとどまっているが、やがては、人間と見分けがつかなくなってくるかもしれない。

世界中を走っている車の今現在の走行状態がビックデータに蓄積され、AIが分析して様々な情報がフィードバックされるようになると、例えば、環境と走行状態を照らし合わせて安全な運転が支援可能になる。緊急車両は今より早く搬送できるだろう。
リアルタイムで、道路状況に加え走っている車の状態などの情報が加わって地図が更新される。この車は人が乗っているか、乗っていないか、トラックなら荷物を積んでいるか、空なのかがわかる。
タクシーはすでにUber(ウーバー)といって、インターネットを使いタクシー会社の配車に加え、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ仕組みを構築している。道路で手を上げてもタクシーを止める時代からスマホ―でタクシーを止める時代に変わってきている。
SFCの講義で聞いたことがある車のワイパーが動いたかどうかで、その地域の天気がわかる仕組みも実現しそうだ。その他にもアイディは尽きないだろう。

さて、車の自動運転の実現は何年になるのだろうか。ロボットの役割がどこにあるのだろうか。SF映画に登場するロボットの見た目は、人間とほとんど変わらなかった。映画『ブレードランナー』の物語は、人間なのかロボットなのかを見分けるところからはじまる。
主人公は、人間かロボットかを見分けるために、いくつか質問する。「電気羊の夢を見るか?」。
もし「電気羊という羊は現実に存在していない」と答えたら、それはどっちなのだろうか。
IoTという言葉を聞いて久しいが、ようやく目に見えて来た。あり得る未来がIoTで近づいて来ている。(文責:中島正雄)