誰もが持っている身近な情報にスケジュールと名簿がある。その情報を手書きの手帳で管理する人もいれば、パソコンやスマートフォンで管理する人もいる。名簿に関しては、私は後者である。
マネジメントゲームの開発者・西順一郎氏は、パソコンでやるべきことは「スケジュール管理」「名簿管理」「戦略会計」の3つだけと言い、中小企業の経営者に情報のIT化を啓蒙している。
西氏の3日間のマネジメントゲーム・インストラクター養成コース研修では、SHARPのポケットコンピュータを使って、経営者にプログラミングを教える。今まで電卓しか使っていなかった経営者の方にとっては、小さなコンピュータを七転八倒しながら使う。
ここで西氏が教えるプログラミング言語はBASICである。BASIC(ベーシック)は「Beginner’s All-purpose Symbolic Instruction Code」の略で「初心者向け汎用記号命令コード」を意味する。Microsoft Windowsアプリケーションの主力開発言語であるVisual Basicの元でもある。
BASICを使って西氏が開発したプログラムは、5つある経営要素の4つを入れて残る未知数を1つ出すというものだ。受講者は、この97行からなるプログラム何度もポケコンに入れては消す。それを繰り返すとプログラムの流れが解ってくる。そして、「INPUT」とか「GOTO」とか「IF ELSE」とかに慣れ、プログラムの規則を発見する。すると、プログラムを自分用に改良したり、自分用にプログラムを作るという発想になる。これが西氏の狙いである。人はコンピュータに使われるのではなく、使うことで人生を豊かにしていくのだ。
西式はこれでは終わらない。次のステップは、2日間かけ、今度はパソコンで「マイツール」というデータベース言語を学ぶ。西氏の言う通りに名簿をで作ると、今までただの住所録だった名簿が利益を生む資料に変わって行く。そして、コンピュータが仕事の役に立つことがわかる。
以来、私はマイツールで名簿を管理している。
名前、会社名、住所などの基本的な項目は他の名簿ソフトと同じ、ただ自分に必要な項目しかない。データが1つも入っていない項目はないから、名簿のデータが美しく、入力ミスやエラーがあれば一目でわかる。DMなどを出す場合は、前回出した列をコピーして1列増やし今回とする。そして、出す人の名前を見ながら「今回どうしようなか~」とその人を思い浮かべ、増やしたり減らしたりする。
私は、ここで封筒やハガキに宛名を直接印刷しないで、宛名ラベルシールに印刷をする。 DMに宛名を貼るときにもう一度“人の手”を加える。そして、祈りを込めて宛名を貼る。”コンピュータが得意なことはコンピュータに、人間しかできないことは人が”というのが西氏から学んだコンピュータの使い方でもある。
今日のパソコンの使い方は、ほとんどの人は誰かが用意したソフトウエアの使い方を学んで利用しているだけである。
不満があってもパソコンに従うしかない。これでは競争に勝てない。パソコンは本当に仕事の道具といえるのだろうか。
パソコンを作ったアラン・ケイ氏は、コンピュータといえば専門家しか扱えなかった時代に、コンピュータが子供たちでも使えるくらい簡単な道具になるようにパソコンを作った。それと同時にプログラミング出来る環境も作った。その環境は「Squeak(スクイーク)」といい、日本でも慶應義塾大学・大岩研究室で「ことだま on Squeak」を開発している。
ケイ氏がパソコンを作ったときに想像していたのは「使う人たちそれぞれが、自分たちをよりよく助けてくれるようにパソコンを変えたり、新しいものにしていくような使い方」だった。ソフトウエアを作ることをプログラミングという。パソコンを自分の道具として使えるようにするには、プログラミングが必要なのだ。そして今、小学生でプログラミングを必須科目とする国がある。日本でも初等・中等教育段階でプログラミングのIT教育を充実させる動きがある。
ホームページを閲覧するブラウザ上でプログラムが動くようになって、インターネット環境は一つ階段を上がった。よって身の回りのIT環境は、パソコンの時代からブラウザ時代へ変わろうとしている。プログラミングが人生を豊かにするカギを握っている。
アップル社のスティーブ・ジョブズ氏が作ったタブレット型端末”iPad”はアラン・ケイ氏が作ったパソコンの試作品“ダイナブック (Dynabook) ”に形が似ている。iPadはビジネスツールとして、ここまで使えるものになってきたけれど、コンピュータと言えるだろうか。iPadは今後、自分のやりたいタスクをさせること。つまりプログラミングが自由に行えるようになったとしたら、もう一つ、階段を上がることができるだろう。
今のiPadは、ケイ氏も西氏もまだコンピュータだと認めてくれないかもしれない。iPadにプログラミングの機能が備わったとき、両氏も初めてiPadを認めてくれることだろう。
(文責:中島正雄)
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