コンピュータは人と会うための道具である

コンピュータで名簿を管理するようになった。それまでは手書きの手帳だった。手帳のいいところはもちろんあり手放せないが、ことが名簿となるとデータを使いまわしできたり、検索できるデジタルの方が何かと使い勝手がいい世の中になってきている。私は、コンピュータの画面に表示された名簿を見たときに、さっきまで思っていなかったことを思いつくことがある。こういうことはいつみても同じ画面の手書きの手帳では味わえなかったことだった。こんなとき、アメリカ人ならきっとアメージング!と言うだろう。

私にコンピュータの名簿管理を教えてくれたのはマネジメントゲームの開発者・西研究所の西順一郎先生だった。先生から、日本人が作ったデータベース言語のマイツールというコンピュータを教わった。マイツールには、最初から名簿のフォーマットが用意されているわけではなく、なにも無い白紙の画面に、自分で項目を作って名簿を作る。最初に作った項目は、西先生に習って「氏名、会社名、〒、住所、TEL、誕生日」だった。25年前のことだ。私は、そのとき作った名簿に項目を加えながら今でも使い続けている。この名簿管理はそれほど素晴らしい。それは、マイツールというデータベース言語のコンピュータだから出来ることなのだ。

25年の間に私が加えた項目はいくつかある。

まずは「携帯電話番号」。個人に連絡が取れる電話番号なので「TEL」の項目の中に入れたらいいとも考えた。が、電話と携帯電話は違うモノなので、どうするか考えた末に一列付け加えることにした。「メールアドレス」の列も同様に一列付け加えた。「郵便番号」が3桁から7桁になったので、自分で「〒」の列を改造した。マイツールで作るデータベースは思いついたときに後から”自分で”直せる。そういうコンピュータと人間のかかわり方を初めに西先生から教わった。マイツールも「直ぐやる、後で直す」の精神でできていた。

コンピュータの得意なことは「並べ替えと検索」「ソートとサーチ」。西先生の口癖でもあったので、私も自然とそういう使い方を覚えた。インターネットがない時代からマイツールユーザーは検索をしていた。さて、何を検索しょうか。例えば、地方からお客さまが来て横浜の中華街で食事をしたいというリクエストに応えたい。今だったらインターネットで検索して調べるのが一般的なのかもしれない。でも私は違う。25年の間に自分が行ったお店の情報が名簿に入っている。私の名簿は友人、知人だけではない。仕事関係の人や、飲食店や床屋、専門店のお店も全部いっしょくたに入っている。必要なときに必要な情報を引き出して、検索して使う。その方が面白い。几帳面でない性格が幸いしているのかもしれない。

私は、名簿に「備考」という何でも書いていい項目を一列付け加えている。私の名簿で「中華街」と検索すると、中華街のお店がずらりと表示される。それは「備考」に中華街と入れているからなのだ。備考には、美味しかった料理も書いてある。例えば「シュウマイ」が食べたいと思えば、名簿で「シュウマイ」と検索すれば一瞬でシュウマイの美味しいお店が出てくる。「TEL」の列を見てすぐに電話で予約するという具合だ。

今年の夏は暑かった。「そうだ、たまには鰻でも食べることにするか」と思いつく。普通の人ならインターネットで検索するだろう。なぜか私の脳は、インターネットで出てくる検索結果に反応しない。どこの誰かもわからない人の評価やコメントには、私の脳はわくわくしな。私は、使い込んだ自分の名簿で「鰻」と検索する。名簿の中のどこかに「鰻」という文字があるリストが一瞬で表示される。日本全国の私が行ったことのあるお店、私の友だちから聞いた鰻のおいしいお店、鰻が好物な友だち私の目に入ってくる。この情報に、私の脳が反応する。そうだあの人と鰻を食べに行こうと思いつく。TELの列を見て電話をする。

いつごろだったか覚えていないが、私は「縁」という項目を付け足した。人もお店も会社も誰かの縁で出会う。その縁を名簿に記録するようにした。

この「縁」項目が大変に重宝している。縁は人の名前もあれば、セミナーやイベント名、学校名などを入れている。これで同窓会の名簿はお手のものだ。  最近の私の名簿では、昨年末に知り合った松本さんの紹介で知り合う人が増えている。松本さんの紹介で知り合った人の「縁」項目には「松本さん」と入れる。松本さんに連絡したいと思い「松本」で検索すると、松本さんと松本さんの縁で知り合った人の名簿があっというまに画面に出来る。「松本」で検索したので、その他にも松本市にあるお店や知人のリストもいしょくたに出てくる。

これが面白い。栗の季節である。この名簿を見て私が思いついたのは、松本市にあるあのお店の栗鹿の子を取り寄せれば、栗好きなカミさんにポイントを稼げそうだということだった。人間の脳は面白いことを思いつく。それがマイツールで更に倍増する。

人に会うためにコンピュータを使うというのは間違いではないだろう。今、コンピュータはインターネットに置き換わってきている。だからといって、流行りのインターネットのサービスを使って人と会うことをショートカットしろということではない。人間に出来て、インターネットが出来ないことの方がまだまだ沢山ある。コンピュータは人と会うために使いたい。(文責:中島正雄)

中島のマイツールで管理している「名簿」。「松本」で検索。

中島のマイツールで管理している「名簿」。「松本」で検索。