マイクロソフト社はクラウドコンピューティング・サービス会社になっていた。

マイクロソフト社の日本本社を見学する機会に恵まれました。私は知っているマイクロソフトの本社は新宿のちょっと先の初台にあった時代で、一度打合せに行ったことがありました。当時は、IT会社ならではの不夜城で、近くにあったスポーツジムでは、朝オープンと同時に徹夜明けの社員がシャワーを使いに押し寄せ、苦情になっていたほどでした。さすがマイクロソフトだな〜と特に驚きもしませんでした。

2014年3月、日本マイクロソフト品川本社を見学する機会がありました。マイクロソフトは私が思っていたWindows、ExcelとWordだけの会社ではありませんでした。マイクロソフト社はクラウドコンピューティング・サービス会社になっていたのです。

クラウドコンピューティング・サービス会社というと、セールスフォース社、Google社、Amazon社などが有名なところ。マイクロソフトもその一社なのです。

マイクロソフト社のサービスはパソコン中心のWindows、Office以外にも、私たちの仕事や生活に影響を与えそうなサービスがいろいろあます。テレビ電話の「Skype」はその一つで、Facebookのテレビ電話にも使われています。知らないうちにマイクロソフトのサービスを使っている場合が多いのです。

中でも私が面白いと思っているサービスは「Kinect」です。「キネクト」と呼びます。Kinectは、コントローラーのようなディバイスを持たずに、ジェスチャーや音声を認識してディバイスを操作できるインターフェイスです。自分自身がコントローラーになるというのがKinectで、今は主にゲームで使われているようです。

今回の社内見学で私は見たKinectの事例は、ゲームの他にも、医療現場で、脳性麻痺や脊髄性筋萎縮症などにより、重度の障碍がある人の口の開閉や、手の動きなどをKinectで検出し、意思表示や活動を支援するソリューション、重度障害者活動支援システム「アシスト・アイ」(※1)。手術時になにも触れずにジェスチャーで検査画像を操作する手術室向け非接触型画像操作システム「Opect(オペクト)」(※2)。商業施設などの入退店や、通路左右の通過人数などを計測出来る人流計測システム「Hello Counter」(※3)などでした。

私が毎年定点観測している家電ショウ(CES)では、身近な家電でSAMSUNG社がリモコンの代わりにKinectをテレビに組み込み、ジェスチャーや音声でチャンネルやボリュームを変えることができるテレビが展示を展示していました。(例えば一差し指を立て口の前に持っていき「シー」と言うとテレビ音が消えるといようなこと)Kinectは、これからテレビや車、家電などの身近なディバイスに組み込まれ、私たちの生活や行動をサポートするものに発展していくような気がします。

残念ながらマイクロソフト社内見学ツアーは写真撮影はできないので、私のコメントでお伝えするしかありません。品川駅を海側に降り、駅に沿って右に進むとJRのビル、ホテル、そしてマイクロソフト本社がある品川グランドセントラルタワーがあります(※4)。入り口で登録をすませ31階のセミナールームに行きます。セミナールームでマイクソフトの社員の方が30分間、パワーポイントでマイクロソフト日本本社の歴史と、品川本社に移った際に同社が実現した環境に配慮した思いとペーパーレス、フリーアドレスなどの説明を聴き、それから実際に19階〜31階まである本社の中を見学してまわりました(※5)。そして、最後は19階にある One Microsoft Café と呼ばれるカフェテリアで懇親会をしました。

私が今回のマイクロソフト社見学ツアーで一番の収穫は、マイクロソフト社は「クラウドコンピューティング・サービス会社」になっていたということでした。マイクロソフトは、世界中で10~100のデータセンターを運営しています(※6)。

私たちのIT環境も今はWindowsのみということではなく、Macも使えばiPadのようなタブレット、スマートフォンも仕事に使うように変化しています。それらのさまざまなディバイスを使って何をしているかというと、メールはホームページを閲覧する他に、社内やお客さまとのやりとりに使われることの多いExcelやWordのファイルを開いて見ています。WindowsのパソコンならExcelやWordは標準装備である場合が多いので、問題はありませんが、iPadやスマートフォンとなると、ExcelやWordのファイルを見るためには形を変えて、変換して見ています。それも見るだけで編集を加えることができません。ちょっとしたストレスを感じることがあります。

もう一つ、ExcelやWordのファイルを会社から持ち出すときの、持ち出し方に問題があると私は思います。ファイルを電子メールに添付して持ち出したり、USBメモリーに保存して持ち出す。社内のサーバーに社外からアクセスするという方法があると思いますが、どれもリスクがあります。

顧客名簿やIDとパスワードのリストなどのファイルをメールに添付して送るというのは、途中でファイルを見られてしまう、コピーされてしまうという危険があります。USBメモリーにしても紛失というリスクがあるでしょう。手軽になった分、危険も伴っています。

手軽にクラウド、つまりはインターネット上のハードディスクを使えるようになったからといって、どこにサーバーがあるかもわからない、何かあったとき電話もできない、サポートも受けれない、しかも無料貸し出しのところに、大切な会社のデータを保管しておいていいものだろうかと私は思っています。

WindowsXPのサポート終了に伴い、Office2003、つまりはバージョンの古いExcelとWordのサポートも終了しました。今日、パソコンをインターネットにつないでない状態で使う方が少なくなってきたので、これは私たちにとっても重要な問題です。メーカーがサポートしていない道具を使って、もしかすると、お客さまや他社に迷惑をかける可能性があるということなのです。この手の迷惑はもはや「申し訳ありませんでした」で済ませない状況も想定できます。

そこで、これらのソフトウエアをバージョンアップで新しいモノに変えて行くしか選択肢はありません。WindowsXPについては、最新のWindowsにするしかない。Officeについては、従来型のDVDからパソコンにインストールする方法と、Office365といってクラウド型のExcelとWordが用意されています。どちらにするか、もしあなたが仕事のやり方を変えたいなら、その答えは間違いなくOffice365です。

Office365なら、ExcelとWordの他にマイクロソフトのデータセンターが使えるというメリットがあります。これはとても大きなメリットです。マイクロソフト社の社員も、品川本社の移転に5年の歳月をかけ準備して、フリーアドレスでいつでもどこでも仕事ができる環境をOffice365を使って作りました。本社見学をしていても、営業部やマーケティング部にはデスクトップパソコンがありません。マイクロソフト社にデスクトップパソコンが無いのです。私たちも仕事にそれと同じシステムを使うことができるのです。

マイクロソフト社が提供するクラウドサービスは、サーバーは今のところ香港、シンガポールにあります(※7)。もちろん有料、電話サポートもばっちり繋がります。なんといっても、仕事で一番よく使うExcelとWordがどんなパソコンでも、iPadでも、タブレットでも、スマートフォンでも、iPhoneでも開くことができ、編集を加え保存することができる。もうUSBメモリーを持ち歩いたり、電子メールを使ってファイルを共有することをしなくてよくなった。リスクとストレスは減りました。  私は、どうしようと思っていた会社の重要なファイルも、マイクロソフト社のサーバーに保管しておくのが、会社内にあるサーバーより安全だと判断しました。

そこで、そのような会社の重要なファイルの置き場所が社内からクラウドに変われば、それだけで仕事のやり方が変わります。なにも会社に行かなくても確認できます。社内でのファイル共有がストレスなく出来るようになるのです。  これからは、マルチディバイス、クラウド、SNSの時代です。この3つで仕事のやり方が劇的に変わります。そこに今回のクラウド化でもう一つ私たちが学びたいのは、「本当の共有」です。

一つのIDとパスワードを社内や複数の人で共有して使う時代は終わりました。一人一人にIDとパスワード与え、権限を設定して共有をするストレスなくITを仕事に活用する時代が来ました。

ITは人に会うための道具です。新しいITを快適に使って、人と会う時間を増やしませんか!

(文責:中島正雄)


参考

※1
アシスト・アイ
http://www.assist-i.net/at/
Kinectを使った重度障害者活動支援システム「OAK」
http://jp.diginfo.tv/v/13-0069-r-jp.php

※2
手術室向け非接触型画像操作システム Opect(オペクト)
http://www.nichiigakkan.co.jp/service/medical/category/hospital/opect.html
手術時にキネクトで検査画像を操作、ニチイ学館と日本MSの提携で新サービス
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20121001/426632/

※3
日本マイクロソフト、Kinectなどを使ったナチュラルUIの研究事例を紹介
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20130128_585388.html

※4
マイクロソフト品川本社
http://www.microsoft.com/ja-jp/mscorp/branch/sgt.aspx
http://microsoft-college.jp/company/shinagawa.html

※5
大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」マイクロソフト、品川新本社を報道関係者に公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/gyokai/20110112_419661.html

※6
アジュール・コレクション 第1回 「おっ、すごい!」と思った「Azureデータセンター関連」動画のスクリーン・キャプチャをたくさん 2011/05/31
http://www.atmarkit.co.jp/ad/ms/azureblog/collection01/collection01.html
Microsoft、“メガ”データセンターを欧米2カ所で開設
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0907/01/news035.html

※7
Office 365 や Microsoft Dynamics CRM Online ではデータの保存場所
http://www.microsoft.com/online/legal/v2/ja-jp/MOS_PTC_Geo_Boundaries.htm
データセンターをシンガポールや香港に置く理由
http://blogs.technet.com/b/bpj/archive/2012/11/21/reason-why-datacenter-locates-in-singapore-and-hongkong.aspx
Azureのデータセンターを埼玉と大阪に開設 マイクロソフト
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1402/25/news097.html


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