ポストに喪中のハガキが届くようになると、名簿を整理するころだ。最近、年賀状はメールやFacebook、LINEで済まされることがあり、届けられる枚数は年々減少傾向のような気がする。一方、喪中ハガキは、さすがにインターネット経由で届けられることはまだなく、こちらは歳とともに微増傾向にある。
名簿とは、手帳の後ろもしくは別冊である住所録やアドレス帳のことをいう。その大小はともかく、誰もが持っているデータベースで、私の最も好きなファイルである。私にそれを教えてくれたのは、経営コンサルタントでマネジメントゲームの開発者である西研究所・西順一郎氏だ。(門下生は西先生と呼んでいる)私たち門下生は、西先生流にパソコンを使いこなすことを西式とよんでいる。
西式の名簿は、本日現在で最新の状態に更新されていて、名前の前と後ろの文字がピッタリ揃っていて、英数字は半角か全角に統一され、住所にはきちんと郵便番号が入り、しかも、郵便番号順にきれいに並び替え(ソート)られているものをいう。したがって、コンピュータで、しかもデータベース化されてないと名簿とはいいがたいのである。同じ表でも、表計算ソフトの表と、データベースの表ではちょっと違う。データベースは、コンピュータの中に、いつでも自由に必要なデータが取り出せる形で記憶されているデータの集まりで、他とはちょっと格が上なのだ。
私が25歳のとき、西先生から当時勤めていた会社の社内研修で、日本語で使える「マイツール」というデータベース言語のパーソナルコンピュータを習った。それ以来、私はなにをやるにもマイツールを使っている。体育会系から営業部に配属された私は、予備知識もなくその研修に参加した。会場には10台のパソコンが並べられ、2人一組で1台を使った。操作マニュアルもなく、いきなり「じゃあ、パソコンの電源を切って~」の西先生の号令から始まった。パソコンは、電源すら教えてもらわないと切ることが出来なかった。次に「じゃあ、立ち上げて~」と号令がかかる。パソコンにフロッピーディスク3枚を交互に入れると、ガチャガチャと音を立て、3分くらい待ち、静まるとようやく使えるようになった。全部のパソコンの準備が整うと、1台ずつ10台のパソコンに、自分の名前、会社名、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を入れた。それはもう大騒ぎだった。なんとか全員が入力を終えると、目の前のパソコンに画面に参加者20名の名簿が出来上がっていた。ここからがワープロとコンピュータの違いだ。
生年月日から命令(コマンド)を使って年齢を出す。コンピュータだから一人一人計算するのではなく一発で出す。一瞬の出来事だった。次に名簿を年齢順に並べ替える。これもコマンド一発で表の中の行が動いた。すごい!データベースはこれで終わらない。
「平均年齢を出して並べ替え、それをグラフにして印刷しなさい。市内の人だけ打ち出しなさい」と課題が与えられた。それは10ケくらいのコマンドを使って出来た。面白い!その日の最後の課題は「この名簿からDM(ダイレクトメール)に使う宛名シールを出しなさい」だった。2つのコマンドを使うと、それも出来た。初心者の私が1日でここまで出来た。西先生が神様に見えた。西式はこれでは終わらなかった。
世の中にある手帳やスマートフォンのアプリにある名簿の類いのモノは、ほとんどが名前の"あいうえお順"に並んでいるが、西式の場合は"郵便番号順"に並んでいる。それは名簿の使い方に違いがある。
例えば、大阪の吉田さんに会いに行くとする。アポイントの電話をするのに名簿から吉田さんの電話番号を調べる。あいうえお順の名簿の場合は、「や行」の見出しから吉田さんを探すか、スマホならば「吉田」で検索する。何人もの吉田さんから大阪の吉田さんを探す。郵便番号順に並べられた名簿の場合は、一番上が北海道で順に下に行くと九州、なぜか一番下が山形県になっている。私の場合、関西方面は真ん中やや下にある。大阪の固まりから吉田さんを探す。吉田さんを見つけるのに、かかる時間は両者ともそんなに変わらない。何が違うか。郵便番号順に並んでいる名簿の場合、吉田さんの3cm上に京都の親戚の名前を見つける。それなら、親戚にも会って行こうかということを思いつく。5cm下には神戸の友人の名前がある。そうだ帰りは神戸に経由で帰ろうかということになる。同じリストなのに、並べ方が違うだけで、意思決定が変わるのだ。西式の郵便番号順に並んでいる名簿は、人に会うための名簿なのだ。
パソコンの時代からブラウザ時代になり、何でもインターネットで検索して手に入れる習慣になっている。本をネットで買うのと本屋さんで買うのとでは違う。ネットで買うのは確かに便利だ。でも、自分の足で本屋に行ったら、今売り出しの平積みなっている本の情報も入るし、その本の周りにある同じカテゴリの本の情報も目にすることができる。情報が入れば意思決定が変わってくる。日本人の文化はサーチ(検索)よりもソート(並べ替え)ではないだろうか。これが人間とコンピュータとの付き合い方ではないだろうか。
名簿から喪中の人を除き、宛名シールを印刷する。年賀状に一枚一枚、その人のことを思い出しながら宛名シールを貼る。中にはメッセージを書く場合もある。手元の宛名シールと用意した年賀状の数が合うと、ちょっとうれしい気持ちになる。そして、年が明け、年賀状の戻りが一枚も無いときの快感ったらない。名簿が美しくきれいで最新の状態であれば、きっと新しい出会いがある。名簿をデータベースで管理すれば、コンピュータは人と会うための道具になるにちがいない。(文責:中島正雄)
投稿者プロフィール

最新の投稿
お知らせ2022.07.062022年7月ニュース
WordPressベースのホームぺージ作成2022.06.16神前会計さんのホームぺージ作成のお手伝いができました
WordPressベースのホームぺージ作成2022.06.03ニフクラ(NIFCLOUD)サーバーでWordPressベース+常時SSL(無料)のホームぺージを作成しました。
お知らせ2022.03.0125期スタート