動画の力

私はパソコンが使えるようになってから「パソコンは人と会うため に使う道具」だと強く思っている。そのパソコンは今、ホームペー ジを見る「ブラウザ」ソフトやアプリに置き変わり、それはつまりイ ンターネットのことで、当時から思っていたことを今様に言い換え ると「インターネットは人と会うために使う道具」ということになる。

インターネットが”きっかけ”となった新しい出会の経験は、少な からずみなあると思う。例えば、行ったこともないレストランの評判 をホームページで調べ予約したり、LINE(ライン)で孫と会話をし たり、フェイスブックをきっかけに同窓会を開催したというようなこ とである。インターネットがきっかけで、新しいお店を見つけたり、 なかなか会えない人と会えたり、旧友との交流が再開するという ような出会いが生まれている。

私の身の回りにも、インターネットがきっかけとなった”新しい出 会い方”のエピソードがある。私には3人の息子がいる。3人とも 学校ではバスケットボール部に所属していて、私の週末は決まっ てカメラを抱えて息子たちの試合観戦である。今は昔と違ってど のチーム(学校)も、親の応援が熱心だ。子どもたちは沢山の観 客の中で試合をする。観客の中には試合の動画(ビデオ)を撮る 人が必ずいて、撮ったビデオを後でDVDにコピーして配布してく れる。それは、わが家の永久保存版で、とてもありがたいことだっ た。

最近の学生スポーツは、体力、技術の他にメンタルが注目され ている。メンタルとは心の使い方といったところだろう。指導者も選 手も、この目に見えないメンタルをどのように扱うか試行錯誤中で ある。試合の前となると、子どもたちのメンタルをポジティブ(前向 き)に、プラス思考に持って行けるように家庭でも食事や会話に気 を使った。それは、母親に頼るところが多かった。そんなとき、私 が子どもたちにできることは何かと考えて思いついたのが、その 昔、“プロ野球ニュース”というテレビ番組でホームランのシーンば かりを集めた動画だった。その動画を見ると何故がスッカとした思 いになり、やる気が漲ってくる気持ちになったことを思い出した。 そして、私は子どもたちのシュートが入った得点シーンだけを集め た動画を作り、試合前に見せることを思いついた。

動画の編集はパソコンがあれば出来る。試合の動画は、いただ いたDVDがある。まず、DVDをパソコンで読み込み、動画をパソ コン用のファイルに変換する。そして、動画編集ソフト(私が使った のはアップル社の「iMovie」)を使ってシュートの入ったシーンを抜 き出し、つなげ一つの動画にする。最後に、子どもが好きそうでか つモチベーションが上がる音楽を動画のBGMに入れて完成させ る。制作に3日、動画の長さは13分09秒になった。

次に、作った動画をどうやって子どもたちに見せるかだった。私 が考えたのは動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」に動画 をアップロードしてiPadで見せる方法だった。 インターネットにつながっているiPadだったら、試合前の少しの時 間でも、子どもたちがどこにいても手軽に見せることができると 思った。作った動画をユーチューブにアップロードして準備は整っ た。動画はその役目を見事に果たし、しばらく経ってユーチューブ でその動画の再生回数を見てみると、なんと12,000回以上になっ ていた。いったいそんなに誰が見たのだろう、、、友だちの数をは るかに超えるこの数字にうれしくもなり、恐ろしくもなった。

私がユーチューブにアップロードしたこの動画をきっかけに、次 男の人生を左右する大きな出会いがあった。中学2年生の冬休 みも終わり、そろそろどこの高校に進学するかを考える時期が来 ていた。そんなある日、中学校の先生を通じバスケットボールの 強豪校の顧問の先生から「高校の練習に来ないか!」というオ ファーをいただいた。もちろん次男は二つ返事で練習に参加し、 その後私は高校の先生にお礼のメールを送った。先生からいた だいた返事の中に「私自身もユーチューブで何度も彼のプレイを 拝見させていただき、ぜひどういった子なのかしゃべってみたかっ たんです。」というフレーズがあった。あの動画が一役かったかも しれなかった。こういうことって本当にあるんだ!動画を見てうち の子に会ってみたいと思ってくれた高校の先生の気持ちと行動が 素晴らしいと思った。その後、彼はこの学校に入りバスケットボー ル部に所属して3年間で2度全国大会に出場することが出来た。 こんな素敵な出会いがあるのだと神様に感謝した。

百聞は一見にしかず。動画の持つ力だった。最近フェイスブック でも手軽に動画が扱えるようになったと、ザッカーバーグ社長が 飾り気なのない社内でプレゼンテーションしている動画を見た。社 長の案内で世界一のIT企業の会社見学を体験した感じがした。 テレビ番組よりユーチューブを見る時間の方が長くなっているとい うレポートもあった。テレビよりインターネットの方が面白いのだ。 それはきっと、そこには新しい人との出会いがあるからかもしれない(文責:中島正雄)

感動の出会いのきっかけとなった動画
(今もユーチューブにhttps://youtu.be/wx9QtZUGwf4ある)