私と経営理念

 経営理念が出来上がったのは2006 年1月6日のことだった。年の暮れに突然会社にやって来た私と同じ歳で経営者では先輩の久保田さんにアドバイスを受けて作成した。しばらくして、経営者の大先輩・楠山さんから「もっと経営理念を研きなさい」とアドバイスをいただいた。それから、私の頭の中に「経営理念を研くこととは」のフレーズが居座るようになった。

 経営理念の作成は、私が起業する前から藤沢にあった公認会計事務所の武田先生に、ことあるごとに勉強して作りなさいと言われていた。起業してから私は、先生のすすめもあって中小企業家同友会に入り、経営理念作成に取り組んだが、そのときは完成まで至らなかった。

 経営理念が出来上がると久保田さんから更に、「経営理念を毎朝の朝礼で唱和しなさい」と強く言われた。まあ、久保田さんが言うなら仕方ない、これで会社がよくなるならと思い昌和をはじめた。 はじめのころは、経営理念を人前で言うのが恥ずかしい思いがあった。それが、今では自信を持って言えるようになっている。あのとき経営理念を作っておいたから、今があるのかもしれないとも思える。経営理念を作成するまで長い時間がかかってしまった。武田先生の言っていた通りだった。


 コンピュータリブ社の23 期がはじまる。私たちは前期、新しいプロジェクト「右脳で考える手帳・M9notes」の製造販売を始めた。私たちの事業の柱は企業向けホームページの作成と管理。ホームページ作成は、1社1社仕様の違う、洋服に例えるなら一人一人サイズ測り好みを聞いて作るオートクチュールのサービスだ。新しいプロジェクトとは、一つのモノを作り、多くの人に買っていただくプレタポルテのサービスなのだ。

 私は新しいプロジェクトを始める前に、インターネットのホームページ上でプロジェクトの協力者を募るサービス「クラウドファンディング」で反応をみることにした。目標100万円のところ140万円が集まり、念願の手帳を作れることになった。クラウドファンディンィングの目標が達成できたこともよかったが、なによりも私たちの考えに共感して協力してくれる人が集まり、このプロジェクトを進ませる力を得たことがありがたかった。

 私たちが、オートクチュールに加えプレタポルテのビジネスモデルに挑戦したのは、私たちが今まで「ホームページ作成」事業で得たノウハウと経験を全て使って、一から「インターネットでモノを売る」ということを実践したいと思ったからだった。インターネットでモノを売り買いするようになって20年を過ぎるが、私たちはまだその正しいやり方が実はわかっていない。それでは、これからインターネットの技術が進んでも、私たちはいつまでも会社案内のホームページしか作れないままである。

 友人・知人を集めて手帳をPRするセミナーを開催したときだった。私が東京のど真ん中、千代田区で開業するきっかけをくれた先輩経営者の小林さんも来てくれた。小林さんが帰り際に一言「中島、経営理念通りになったね」といった。私はそれを聞き逃さなかった。

 久保田さんの「これはどうしてなんだ」のあまりのダメ出しに、喧嘩しながら作った経営理念だった。私は「経営理念を研きなさい」をどうすればいいのか、いつも頭のどこかで考えているようになっていた。今回のプロジェクトをはじめるときも、先ず経営理念に合っているかを考えた。私は、小林さんの一言に救われた。経営理念が出来上がったとき、経営理念を書いて額に入れて掲げておくようにと、久保田さんが額と筆ペンを買って来てくれた。

 私は、「右脳で考える手帳・M9notes」は、わが社の経営理念の「最先端の英智を活かし」だと確信する。そして、私たちが「この手帳を世の中の役に立つように育てること」は、「お客さまがサイバー社会で快適に過ごせるように貢献する」ことになるにあたる。つまり、私たちが「右脳で考える手帳・M9notes」を正しく売ることは、私たちの経営理念を研くことになるのだ。

 私は、多くの人に支えられていることを実感している。今期も「やさしくデジタル」を合言葉に、お客さまの人生とビジネスを豊かにできることを考えながら仕事をしていきたい。(文責:中島正雄)

中島が「23 期はどのようにしようか」と頭の中を整理したもの
中島が「23 期はどのようにしようか」と頭の中を整理したもの