4人に1人

35億。「地球上に男は何人いると思っているの?」と太い眉で自信たっぷりのキャリアウーマンの格好したお笑い芸人の決めゼリフである。2017年6月28日「月間利用者数が20億人を突破しましたのでご報告させていただきます」。とフェイスブック(Facebook)社からニュースリリースがあった。現在の世界の人口は75億人といわれているから、世界中の4人に1人がフェイスブックを利用している計算になる。4人に1人という数字で連想するのは、日本の高齢者の割合である。多いか少ないかどっちなのだろう。

自分の周りのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用を見ると、フェイスブックよりライン(LINE)の方が使われているような感じもする。大学生はツイッターを使っているところをよく見る。そういえば今の米大統領もそうだ。先日、バンコク(タイ王国の首都)で会社を経営している私の友人から聞いた話だと、お客さまとのやりとりや、企業の広告などの利活用はフェイスブックだと言う。フェイスブックに人が集まっているから他は使わない。タイはインターネットユーザー数とフェイスブックのユーザー数がほぼ同じだからだ。タイに限らず中国を除いたアジア地域ではフェイスブックの利用者は4人に1人どころではない。

私がよく使っているSNSはフェイスブックだけれど、とてもビジネスに活用していると言えるほどではない。初めのうちは自分が投稿した記事に「いいね!」がつくのがうれしくて、事あるごとに投稿をしていたが、仕事の席で「いつも美味いものばかり食べているのですね〜」などと言われることが多くてなってくると、たわいもない自分の身の回りの投稿は出来なくなってきた。最近では、仕事に関係のない、すっかり私のライフワークになった息子の部活のおっかけ(応援)と、趣味で集めているピンズ(ピンバッチ)の記事をたまに投稿している。

そんな私でも、ついこの間「家中でフェイスブックってすごいね〜」という出来事があったので紹介したい。私の息子は今年から高校生。小学校、中学校とバスケットボール部に所属して活躍していた。私の週末はカメラを持って息子の試合の応援に行く。初めは私の記事など誰も見ないと思い、自分が独りで楽しむ程度でフェイスブックに記事を投稿していた。フェイスブックは写真や動画が簡単に無制限に投稿できるし、それが自分史のように時系列に並べてストックされ、後から見ても面白い。とても無料で使えるサービスとは思えないほど便利である。

息子が試合に出るようになり、決勝戦などの大きな試合に勝ったときの朝食が、私が作ったスパゲッティ・カルボナーラを食べていたことから、試合の日の朝食はカルボナーラというルーチンができた。私から見ても朝6時に大盛りのカルボナーラを美味そうに食べる息子の絵は面白かったので、その姿をフェイスブックに投稿するようになった。その記事に、私の友人から「いいね!」がつくようになっていった。いいね!がもらえると、また次も、そのまたその次もと、うれしくなって記事を投稿した。

息子が所属する高校が県大会に出場した。その試合会場での出来事である。試合を観ていた息子が知らない人から「中島君、朝おいしそうにカルボナーラを食べているのを見ているよ」と話しかけられた。そして「これお父さん渡して」と中にピンズがいっぱいに入った茶封筒を手渡された。私が家に帰ると息子が「お父さん、星澤さんって人、知っている?」と聞いてきた。神奈川県のバスケットボール関係者で星澤先生を知らないとはもぐりである。星澤先生と言えば、元金沢総合高校のバスケットボール部の先生で、県立高校女子バスケットボール部で4度日本一に輝いた名将である。「その人からこれもらった」と私は星澤先生から渡された茶封筒を息子から受け取った。私は星澤先生のことを存じ上げているが、星澤先生との面識はなかった。

フェイスブック上でしか私のことを知らない星澤先生は、フェイスブックの私の記事を見て、私の趣味のもう一つの趣味を知り、県大会の会場に行けば今日も朝カルボナーラを食べていた私の息子がいるに違いないので、見つけて世界各地で集めたバスケットボール関係のピンズを手渡してくれた。こんなことが本当にあるのだ。

最近では、仕事でもちょっとした雑談で、事前にフェイスブックで私の周辺の情報を調べてから会いに来ていると感じるときがしばしばある。もしかすると、それは最近のビジネスマナーなのかもしれない。中にはフェイスブックで私の友だち関係を調べて、私の友だちを紹介してくれないかと言われることも何回かあった。そんなことがあるとそのサービスを使わなくなったり、閉ざしてしまいがちになるのが日本人的メンタルだ。

アジアの中で一番フェイスブックを使っていない国は日本である。2回めのオリンピック開催もひかえ、これからアジアも商圏と考えているビジネスマンにとって、つながるチャンスの一つは、フェイスブックのタイムラインにたわいもない記事を投稿しておくことかもしれない(文責:中島正雄)

Facebook 月間利用者数が20億人突破

星澤先生からいただいたピンズ

星澤先生からいただいたピンズ